香りの分析
バラの香りは、主に花弁の表面から香り立っています。そしてバラの種類によって香りに違いがあるのは、花弁に含まれる香気成分(精油)の組成や量が異なるためです。
香りを調査、研究するとき、同じ品種でも春と秋では香りの印象が違ったり、栽培地(場所)や朝と昼の違い(時間)、また実際に調査している時の温度や湿度で香りが異なる場合があります。さらに複雑にしているのは、評価する側の人が違えば嗜好や感じ方が違うことです。表現の方法や語彙もそれぞれであるため、相互に理解しにくくなってしまいます。
だからこそ、発散している香り成分を明らかにし、より客観的な情報を構築したいと考えられてきました。
本来の内的成長因子で開花し香りを発散させることに加え、外的状況(環境)に対応することで刻々と変化している事実を踏まえ、数百種のバラを評価した結果、概ねバラが半開花の状態にある時、新鮮さや華やかさ、香りとしての美しさなどをバランスよく発散させていることが確認されました。
バラの香り成分の分析、調査のデータの収集は主にこの時点の自然に発散された香気成分を捕集しGC/MS分析したものをいいます。
香りの捕集方法・ヘッドスペース法
香りは、ヘッドスペース法という方法で捕集されます。少し前まで捕集方法は「テナックス吸着法」が一般的でしたが、最近では「SPME法」が主流となっています。
SPME法(ソリッド・フェイズ・マイクロ・エキストラクション=固相微量抽出法
極細ステンレスの先端にある特殊な合成樹脂部分で、香りを吸着させる方法。
最近ではツイスターと呼ばれる従来使われてきた器具より約50倍も吸着できるものが開発され主流となっている。
テナックス吸着法
バラの花にガラスのヘルメットをかぶせ、下部の開口部には脱脂綿などで蓋をして空気を循環させる。空気を送り込むほうのチューブにはチャコールを充填して空気を無臭にする。空気+香気成分を吸い込む方には、テナックスという香りを吸着する物質を装着する。かおりが強い場合は2~3時間。香りの弱いものには一日かけて捕集する。
香りの分析方法
GC/MS分析
GCはガス・リキッド・クロマトグラフィという機器で、略してガスクロという。香り成分を、ある種の液体との相互作用により分離させるという意味を持ち、ガスクロは物質ごとに分ける役目をする。
MSはマス・スペクトロメトリー(質量分析計)といい、分けられた物質がどんな分子構造であるかを調べる機器。高真空中で熱電子により物質をイオン化し、電場の作用で質量をふるい分け、検出する。
この両方がなければ物質の特定はできない。合わせてGC/MS(ガス・マス)分析法と呼んでいる。